グループホームをアジールに!
理事長 山田 育男
当法人の運営する障がい者グループホーム「縁パワーハウジング・ウェイ」を開設したのは、2016年2月1日です。開設してからすでに8年以上が経過しました。これはすべて当法人を応援してくださった理事及び正会員の皆様や、私たちのグループホームを盛り立ててくださっている入居者の方々及びそのご家族、そして入居者を支えてくださっている関係機関の方々のおかげです。この場を借りて感謝申し上げます。
さて、障がい者グループホーム「縁パワーハウジング・ウェイ」は、障がい者が暮らすための住まいが少ない状況を改善したい、安心した住まいを確保したなかで就労を安定させたい、少しずつできることを増やして強みを見つけてもらいたい、など、生活をサポートすることを通して自己肯定感が高められる、そんなグループホームを追求したいといった考えから、以下のコンセプトを掲げて、グループホームを運営しているところです。
「障がい者一人ひとりがその人らしく生きることができるよう、障がい者が大切にされる住まいと暮らしを守り、誰もが出番のある社会に!」
私たちのグループホームを「ウェイ」と名付けたのは、従来のグループホームとは異なった、もう一つの「新しい住まいのあり方(方法)」を追求したいという気持ちからでした。もちろん、そうした私たちの思いや願いを実践していくためには、今のままでは限界があると感じ、開設当初から「もう一つのグループホーム」の建設を構想してきました。それが「グループホーム・アジール構想」です。
アジールとは何か
「アジール」とは「避難場所」のことを意味します。
ここでは二つの意味として解釈しています。
一つは、障がい当事者たちの「逃げの空間」、つまり「居心地のよい場所」であり、精神的なアジールです。
しかし、これだけでは「グループホームの家族化」をもたらしかねないし、社会的自立に至りません。
次のステージとして、「障がい当事者たちの問題を自分たちで解決できる場所」、つまり「自分たちが自分たちの手で仕切っているという実感を持てる場所」として「グループホーム・アジール」を解釈できないかと私は構想しています。
もちろん、そのためには「居心地の良い場所」で安心・安全が守られていることが前提ですから、前者は後者を基礎づけ、段階的に乗り越えていく考え方として位置づけています。
グループホーム・アジール構想
最初に開設した第一グループホームは精神的なアジールとしての位置づけを強調し、安心・安全が守られている「居心地の良い場所」を追求してきました。したがって、入居者の不安や困りごとなどを取り除いていくため、親密な関係を切り結ぶことを大切にしてきました。そのことによって、相談しやすい環境や、「あなたはひとりじゃないよ」という意識を持つことができる、そんな「あたたかい家族」のようなグループホームをめざしてきたのです。人はこうした環境の中で生きていないと本当の意味の「自立」はできないからです。
第二のグループホームは、もちろんそのことを意識し続ければ「グループホームの家族化」をもたらしかねないため、社会的自立を促していく場所として位置付けたいと考えています。
入居者の中には「一人暮らしがしたい」という希望を持たれている方もいますが、「一人暮らし」はそう生易しくありません。段階を踏むことが必要です。「ホップ」と「ステップ」なしには「ジャンプ」はできないと思うのです。
そこで、第一のグループホーム「ウェイ」は「ホップ」の段階、第二のグループホームは「ステップ」の段階です。「ステップ」では障がい当事者みずからの力を信じ、なるべく障がい当事者間の「自治空間」をめざしていくことができる、「共同生活の場」にしたいと思っています。
第三のグループホームは、「サテライト型グループホーム」で、「一人暮らし」の一歩手前を経験し、自信を高めていける「自立生活の場」にしたいと思っています。
私たちの運営する障がい者グループホームは、以上の「グループホーム・アジール構想」の三段階ステージをベースにした「住まいのあり方」をめざしていければと考えています。
もちろん、第一のグループホームを介さないで第二のグループホームからという人もいるかもしれませんし、第一のグループホームでじっくり生活することがその人らしく生きられるのであれば、それはそれで構わないとは思っています。
障がい当事者一人ひとりの「生き方」に合わせた「住まいのあり方」が追求できれば幸いです。