正会員・佐藤信行さん
高齢者グループホーム支援員
社会福祉士・介護福祉士
~利用者さんから気づかされること~
私は、認知症高齢者グループホームで勤務しています。グループホームでは日々、入居者さんから学ぶことが多いです。認知症は脳の器質的な障がいによる中核症状[物忘れ、状況が認識できない、物事の手順が踏めない、失禁 等]と、それに伴った行動・心理症状[不穏、徘徊、妄想、異食、拒否 等]により日常生活が困難になる病です。家族や介護者が疲労困憊するのは、この行動・心理症状によるものです。
私が入居者さんから学んだ行動・心理症状の捉え方についてお話しします。認知症の人が事実ではない経験・事象(例えば妄想)を事実として受けとめてしまっていることは、その人にとっては事実であると私は考えます。認知症の主体にとってそのような経験・事象を事実として生きていること、それは本人にとっては事実であり客観的な事実性とは別に大切に捉えられるべきと考えます。
私は、行動・心理症状を中核症状の[痛み]と捉えます。本人が痛みを感じているいじょう痛みは事実として在るものです。介護職員の役割はその痛みを和らげることと心得ます。では、どのようにして痛みを和らげるのか?それは[信頼の構築]という共同作業です。認知症の人が何を言おうとしているのかを聴き取る[痛みの共同化]です。私たち人間は自分のものでない他者の経験や痛みを[自分のもの]として受けとるような感受性を備えています。そして一歩進んで、事実ではない経験・事象を事実として認識している人の痛みを受けとることも可能なはずです。
同時に、認知症の方と関わる人は日頃から[この人は信頼できる人だ]、[この人は優しい人だ]、[この人は敵ではない]善のイメージを印象づけること、演じることが大切です。行動・心理症状が痛む時、この信頼できる人による[言葉かけ、目と目が合う、触れられる、近くにいてくれる、安心感・・・]により痛みか和らぎ行動・心理症状の緩和に繋がります。中核症状が改善されなくても、認知症の主体が感じている痛みが一時的にも消えればそれで良いと考えます。そして相対的に痛みを感じている時間が短くなればそれで良いと考えます。
グループホームの穏やかな夜とは、入居者さんが夜勤の職員に対して[信頼できる人、優しい人、安心できる人]と感じる時です。睡眠の保障は脳の疲労物質を軽減させるとても大切なことです。また、夜間不穏になることもありませんので職員にとっても穏やかな夜勤となります。
介護者が疲労困憊せずに介護する秘訣は日々の信頼の構築[正のスパイラル効果]なのです。善き人であり続ける努力は入居者さんの為だけではないのです。
私は、入居さんと介護職員がグループホームで共に生活するために、信頼の構築が双方の利益[情けは人の為ならず]となることを実践の中で入居者さんから学びました。これは私の大きな財産です。 (終わり)
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