特定非営利活動法人縁パワー
理事長 山田 育男
私たちの運営する障がい者グループホームのコンセプトは、「障がい者一人ひとりがその人らしく生きることができるよう、障がい者が大切にされる住まいと暮らしを守り、誰もが出番のある社会に!」です。
このコンセプトは、私が今まで定時制高校、教育困難校、特別支援学校、不登校・中途退学者等が通うサポート校、ひきこもりの支援、生活困窮者支援、ホームレス支援、精神障がい者の支援をさせていただき、現場で出会った方々とふれあい、かかわるなかで、何を大切にしなければいけないのかを整理した結果、到達した言葉です。
「障がい者一人ひとりがその人らしく生きることができる」ために、私たちのグループホームで大切にしていることがあります。
「その人らしく生きる」には、グループホームの中で「安心・安全」が守られている環境があるかということが重要なポイントです。
障がいを持っていることによって学校や職場等でいじめやパワハラを受けたり、障がいの理解が薄い家族から(言葉も含めた)暴力を受けたり、他人から権利を侵害されたり、など、グループホームに入居されている方々の中にはそうした経験を持つ方々が多いと言われています。
こうした状況に置かれている方々が安心して暮らしていくには、まず、グループホーム内が「安心・安全な場所」「居心地の良い空間」でなければなりません。自分が守られている感覚がなければ、安心して暮らすことはできないでしょう。
その人の存在、その人の思いや願い、その人そのものが尊い命であること、そう、人は、「ありのままの自分のであること」を全面的に受け入れられることなしに、自分自身が大切にされている感覚を得ることはできないのです。つまり、そうした環境がグループホーム内にあるからこそ、自分の言葉や気持ち、感情、意見等を相手に伝え、表現できるのです。
「その人らしく生きること」は、そうした土台なしに到達できないと思うのです。
たとえば、親から虐待を受けてきた方について考えてみたいと思います。
本来、最も愛情を受け、信頼関係を築けるはずの身近な親から暴力をふるわれ、いつまた親が感情的になって暴言・暴力をふるってくるのかびくびくしながら生活しているわけですから、家の中ではつねに「恐怖」の中で生きています。そんな家に「居場所」があるはずはありません。また、親との愛着関係が築かれていないため、人と人との関わりも苦手としており、人とどう接したらよいかもうまくありません。気の合う仲の良い友達や大人ができたとしても、関係性の取り方が近すぎて求めすぎたり相手を嫌がらせてしまったりします。そうした関係性の失敗を何度も何度も繰り返していくなかで、人との距離の取り方を学んでいくわけですが、そうした関係の切り結び方を丁寧にサポートするには、人に大切にされている実感を得ていることが重要なポイントであると考えます。
「その人らしく生きること」は、たんなる「その人の個性」だけを意味していません。その人の生きてきたバックグラウンドをしっかり捉え直し、関係の出会い直しや、暮らし直しを共に支え、見守っていくことを通して、「その人らしく生きること」を当本人が見つけていくのです。
入居者一人ひとりが「自分らしさ」を獲得することは、私たちの日々、どのようなかかわり方をめざしていく必要があるのかが、問われています。
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