特定非営利活動法人縁パワー
理事長 山田 育男
私たちのグループホーム・コンセプトに「その人らしく生きる」という言葉があります。
前回は、「その人らしく生きる」ために、私たちがグループホーム内で「安心・安全を守ること」「居心地の良い空間をつくること」を大切にしていること、「安心・安全を守ること」「居心地の良い空間をつくること」によって、障がい当事者の方々の存在、その方々の思いや願い、その方々そのものが尊い命であること、つまり、「ありのままの自分のであること」を全面的に受け入れられることなしに、自分自身が大切にされている感覚を得ることはできないと述べました。
自分自身が大切にされている感覚を得ることによって、自分の言葉や気持ち、感情、意見等を相手に伝え、表現できるわけですね。
ここが私たちグループホームの根幹にある考え方です。
次は、「その人らしく生きる」ことができる環境設定の重要性について書きたいと思います。
「その人らしく生きる」ということは、「自分のペースをつくる」「自分のペースで過ごす」ことがその前提になければ、「その人らしく生きる」ことはできないと思います。
では、グループホームに入居したばかりの方が、自分のペースをつくったり、自分ペースで過ごしたりすることができるでしょうか。生活環境の変化だけでなく、グループホーム内で共に暮らす仲間とうまくやっていけるか、職場にしっかりと通えるのか、など、不安なことばかりです。心に余裕の持てない時期に、生活上の様々なことをしていただくことは難しいと考えています。
多くの支援者の方々は、「朝食・夕食の皿洗いや、洗濯をさせないのですか」と質問されることがあります。もちろん、グループホームに入居し、いずれは自分のことは自分でできるようサポートしていくことも大切です。その意味でいえば、自立していけるよう、生活上のことをしていただくことは大切な視点です。
しかし、グループホーム入居当初にそのことを強いることは、非常に危険だと私は思っています。自分自身に余裕が持てないということは、自分のペースをつくったり過ごしたりすることが難しい時です。入居当初は「自分のペースで、グループホーム生活に慣れること」が重要なポイントです。多くのことを強いれば、精神的につかれてしまい、生活する基盤さえつくれなくなってしまいます。したがって、私たちのグループホームは、入居当初、自分のペースがつくれるまで、私たち運営側が身の回りをサポートにしています(もちろん、ご本人のできる力を活かすことは、自己肯定感を高めることにもなりますので、得意なことは活かしていただいています)。
自分のペースがつくれたり、心の余裕が出来たりすれば、自分のことが自然にできてきます。その時にこそ、はじめて生活上のことをしていただくチャンスなのだと思っています。
したがって、入居当初の数ヵ月は、できるだけ暮らしやすい環境設定を心掛けています。
何もしていただかないことが、自立生活を可能にすることなのだということも重要なポイントとしておさえていきたいのです。
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