スウェーデンが高福祉を実現させているのは、国民が稼ぎの25%を税として納め福祉を支えているからです。[稼ぎの25%は税]との国民同意が得られる国と日本との違いを歴史的背景を切り口に考えてみました。
スウェーデンは戦前より武装中立福祉国家です。日本は敗戦により軽武装日米同盟貿易技術立国を目指しました。
スウェーデンは昔から列強ロシア・ソ連の脅威に晒されながら、生き残るためには誰とも手を組まず中立であることを強く意識してきました。隣国フィンランドは大戦中ソ連と闘い、その過程でナチスと手を組み、終戦間際はナチスと闘う血深泥を経験しました。その間スウェーデンは中立を維持し、戦後の冷戦時代も中立を貫きました。大国に頼らず中立を維持するためには国民一人一人が国の問題を自分の問題として常に思考するトレーニングがなされてきたと推測されます。武装中立福祉国家を成すために[自尊自立の精神が精鋭化]したのでしょう。
日本は戦後、日米同盟により国防を米国に任せ経済成長に努力しました。第三号被保険者制度はそれを可能にする仕組みの一つですね。軽武装日米同盟貿易技術立国路線は[金を稼いで国防とか面倒くさいことは金を払って誰かにやってもらおう]という精神を増長させるに至ったのでしょう。気がついてみると[米国の政策に振り回され、介護とか面倒くさいことをやってくれる誰かがいなくて、しかも金も無くなってきた]のは当然の帰結でもありますね。
国民の福祉を中心に経済政策や国防政策を考えてきたスウェーデンと、経済成長を最優先して福祉はセーフティネットの装置としか捉えなかった日本との違いです。結果、日本は問題に対して後手後手になりました。
また、宗教や哲学により命に対する考え方にも違いがあります。現代の日本人の多くは老いを劣化、死を敗北と捉えます。基督教文化圏であるスウェーデン人は老いを熟成、死は敗北ではなく復活までの長い眠りと捉えます。[延命のための手術は虐待]との国民同意が得られています。日本も生命倫理について介護問題と平行して一人一人が考える必要があると思います。
スウェーデンの人は、自分達はバイキングの末裔であることに強く誇りを持ってます。自尊自立の精神の根にはそれがあるのだと思います。
私は、日本も稼ぎの25%を税にすれば高福祉が実現するとは思いません。他国の真似をしても歴史、宗教、文化は異なります。また、税を何に使われるかは不透明だからです。大切なことは福祉政策と大上段に構えなくても[一人一人が両の手を広げた範囲の身の丈にあった、他者との良い関わりを心掛けること]と思います。私はそれを[半径5メートルの安全保障]と呼びます。