NPO法人共同連の事務局長である齋藤縣三さんは、第3の就労の場としての「社会的事業所」の考え方について以下のようにお話をされていました。
障がいのある方の就労について考えた場合、(1)一般就労、(2)福祉的就労、があります。共同連はもう一つの考え方として(3)社会的事業所、を提唱しています。
共同連が「社会的事業所」を提唱している意味合いを簡単に整理してみます。
障がい者が「一般就労」で働く場合、一般企業はその企業経営上にプラスになると判断される範囲内でしか障がい者雇用を行いません。また、企業に雇用されても一介の従業員でしかなく、「末端の駒」として使われる立場でしかありません。
一方、「福祉的就労」で働く場合はどうでしょうか。これは「就労継続支援A型・B型事業」等、あくまで福祉サービスとして成り立っている就労です。A型は雇用関係を持った働き方ですが、B型と同様、福祉サービスであるかぎり、「支援者」と「利用者」との関係から乗り越えることができません。また、すべての事業所ではないにせよ、障がい者をかき集め、給付金をもうけようという、新手の貧困ビジネス化したA型事業所が横行しており、齋藤さんは「よろしくない」と言っています。
第3の就労の場としての「社会的事業所」とは、「現在の一般的な就職先である企業、団体、役所とは異なる場であり、障がい者をはじめとする社会的に排除されている方が働くことを目的につくられる場である」と言っています。
社会的事業所の働き方は、障がい者の雇用を目的としており、その方を含めて経営をどうするかを考えていく働き方です。また、働くみんなが対等に運営していくことが重視され、一人ひとりの主体性が尊重されます。ちなみに、共同連は、イタリアの社会的協同組合及び韓国の社会的企業を学び、社会的に排除されやすいホームレス者や障がい者、難病者、ひきこもり、アルコール又は薬物その他の依存症者、刑余者、ニート、シングルマザー、性暴力被害者、外国人移住者及び生活保護受給者等の方々を包摂する場として、社会的事業所を位置付けており、非常に面白い働き方を指し示しています。
もちろん、働き方は多様ですので、絶対的なものはないと思います。したがって、一般就労や福祉的就労を否定するものはでありません。大切なことは、一般就労や福祉的就労になじまず、安心して働き続けたいと願ってやまない方にとっては、社会的事業所は、新しい考え方を提示していると思うのです。
NPO法人共同連編『日本初 共生・共働の社会的企業』は、以上の内容を理論的・実践的に論じている著書です。