認知症高齢者グループホームにおける[半径5メートルの安全保障]の実践についてお話しします。安全保障とは他者との正の関係性を構築し、負の関係性を減少させることです。
グループホームは少人数集団で、家族的雰囲気や馴染みの関係等の長所がありますが、実は相性の悪い相手から逃げ場が無い短所もあります。相性の悪い相手とは入居者さん同士、入居者さんと職員、職員同士のそれぞれがあります。この短所は当事者だけでなく周囲の人にも悪影響を与え、最悪の場合グループホームが負の関係性の構築で病を発症させる場となってしまいます。これはとても恐いことです。
関係性の作用こそが最も大切です。関係性は二種類あり、正[陽]の関係性と負[陰]の関係性です。正[陽]の関係性の感情は(愛、信頼、好き、喜び、楽しい、笑い 等)です。負[陰]の関係性の感情は(怒り、憎しみ、悲しみ、妬み、嫉み、恨み 等)です。僕はこれらの感情をエネルギー[気]と解釈します。正の感情は正のエネルギー[陽気]を生み、負の感情は負のエネルギー[陰気]を生みます。例えば、病は身心に陰気が溜まった状態です。陰気による身心が病んだ状態だから[病気]なのです。身心に陽気を蓄え元に戻ると[元気]となります。エネルギー[気]は人と人との関係性の中で循環します。つまり感情から生まれた陽気と陰気が関係性により身心に作用しているのです。人間関係でストレスが溜まると病気になるのはこの作用によるものと考えます。
少人数集団のグループホームは、相性の悪い相手からの逃げ場がありません。よって場が負の関係性に支配されることを極力避けなければなりません。私は、[負の関係性の支配からの解放を、半径5メートルの安全保障]と考えます。私は、それを可能と成らしめる魔法の言葉を知っています。その言葉とは[ありがとう]です。掃除の後に[ありがとう]、炊事をしなから[ありがとう]、洗濯物を畳んで[ありがとう]、すれ違い際に[ありがとう]、挨拶がわりに[ありがとう]・・・・とグループホームを[ありがとう]浸けにしてしまいます。先ず、負の関係性の感情を職員自らが赦す気持ち、感謝する気持ちに換えてしまうのです。
感謝の気持ちを[ありがとう]と唱え続ける→関係性中で正のエネルギー[陽気]が生まれる→負のエネルギー[陰気]を減少させる→感謝の気持ちが増す→[ありがとう]と唱える→このスパイラル効果により、負の関係性の支配からの解放へ繋がる→正の関係性が構築されると考えます。
物事を興す時、よく[ゼロから始める]と言いますが、認知症高齢者グループホームの場合はゼロからではなく[マイナスから始める]なのです。認知症という病を得ているので身心には陰気が溜まった状態であると考えます。この様な方々で構成される集団ですから、場は陰気に満たされてます。故に職員に求められる資質は[惻隠の情]すなわち慈悲の心です。
そして常に、陰気の影響を受けているので、身心に溜まった陰気を排出すべく健康に留意しなければなりません。休む時は充分休養し、ストレスを解消する[何か]を持つことが必要です。そして物事を楽天的に捉えることが大切ですね。
映画[セブンイヤーズ イン チベット]の中でダライ ラマが語っていました。[私は悩まない。悩んで解決できる問題はたいした問題ではない。悩んで解決できない問題は悩んでも仕方がない]と。