ブライアン・トレーシーは、ビジネスコンサルタント業務の権威として、戦略的計画・組織開発等の分野で高度なコンサルティングを手掛けています。私は、ブライアン・トレーシーの著作を10冊以上読んでいますが、その中でも『ゴール』(PHP)は、非常に参考になった本です。
ブライアン・トレーシーは、18歳で高校を中退した後、小さなホテルの皿洗い、洗車係、アパートの管理人兼清掃係、肉体労働、製材所や工場、農場や牧場、高層ビルの建設作業員、貨物船の船員等の仕事を転々としていたそうです。
高度なコンサルティングを手掛ける現在の仕事からは考えられないほど、遅咲きの人生を歩まれています。
しかし、その後、歩合制の訪問セールスの仕事に就いた頃のことです。1日中足を棒にしてようやくひと晩の宿代を稼げることも珍しくなかった日々が続いていたある日、ブライアン・トレーシーは、一枚の紙を取り出し、次の「途方もない目標」をそこに書いたそうです。
「訪問セールスで1ヶ月に1000ドル稼ぐ」
ブライアン・トレーシーは、その紙に目標を書いた後、それっきり忘れてしまったのですが、その30日後、ブライアン・トレーシーの人生は「180度変わっていた」と言います。彼は、売り切るテクニックを身に付け、売り上げを3倍に伸ばし、毎月1000ドルの報酬で、営業部門の指揮をし、ほかのセールスマンにセールス法を教える依頼までされます。ブライアン・トレーシーは、その日を境に人生が変わったと書いています。
その後、一介のセールスマンだった彼が、部下を率いるセールス・マネージャーになり、自ら人員を集め、95人からなる営業部門をつくり、明日の食事を心配する身から、人生が一変し、目標を紙に書き出す方法、そして効率よく売り上げを伸ばす方法を教えはじめ、彼の収入は10倍に跳ね上がったと言います。
もちろん、彼の人生がすべて順風満帆であったわけではなく、挫折もあり、ゼロからの出直しがあったとも書いていますが、ブライアン・トレーシーは、そのたびに、1枚の紙を目の前に置いて座り、新しい目標を書き出していったそうです。その目標を毎日実行し、1年のうちに人生は再び変わったと言います。
ブライアン・トレーシーは、目標設定がいかに強力な効果を発揮するかということを気づきはじめます。
これから紹介するブライアン・トレーシーの『ゴール』は、「目標設定がいかに強力な効果を発揮するか」をわかりやすく教えてくれる本です。
私はブライアン・トレーシーの本を読んで「大金持ちになりたい」なんて1度も思いませんでしたが、「目標設定がいかに強力な効果を発揮するか」ということがどれほど説得力を持ち、大切なことであるかを学ぶことができました。『ゴール』はその意味で画期的な本であると感じました。
かつて精神障がい者の就労支援をしていた頃、ブライアン・トレーシーの『ゴール』を教材化し、障がい当事者の方々に「目標を書き、実行する」ためのセミナーを開いたこともありました。また、そのセミナーをつくっていく過程で、私の方がブライアン・トレーシーのスピリットを自分のものにしようと思ったのかもしれませんね。
「目標設定の作業において、私が重視しているのは『明確さ』です。自分が何者であるか、何を望んでいるのかを明確にすることは、生きている間に何を達成できるかと直結しているのです。」
ブライアン・トレーシーは「あなたが望むことだけを考える」を強調します。つまり、目標が自分のためのものであるかが大切です。まず自分自身を見つめ、そこから前進することが大切だ、と。
「私はいったい何がしたいのか?」こそ、目標を達成するうえで、一番重要な問いだと言います。
次に、大まかな目標を定め、具体的に肉づけしていきます。
・現在の仕事面における最も重要な目標を3つ挙げてください。
・現在の金銭面における最も重要な目標を3つ挙げてください。
・現在の家庭生活や人間関係における最も重要な目標を3つ挙げてください。
・現在の健康面における最も重要な目標を3つ挙げてください。
以上の質問に答えていくうちに、「現在の自分にとって最大の不安や悩みは何だろう?」という別の問いかけが浮かんでくると言います。
自分の最大の不安や悩みがはっきりしたら、
・それぞれの問題に対する、理想的な解決策は何だろう?
・これらの問題を消し去る方法はないだろうか?
・それぞれの問題を解決するのに、最も手っ取り早く直接的な方法は何だろう?
といった問いかけをしてみます。
ブライアン・トレーシーは、「いかに解決策を簡潔にして、最短で目標に向かうかが、私たちにとっての課題」だとします。
絶対的な意図をもつことで、一瞬一瞬に焦点を当てるべきことがわかると言います。ブライアン・トレーシーは、絶対的な意図を設定するために、次の質問を投げかけます。
「たった1つだけ、決して失敗することはないと保証されるとしたら、あなたは何をしますか? 大きさや期間に関係なく、必ず成功するとしたら、あなたはどんな目標を立てますか?」
ブライアン・トレーシーは、「答えが何であれ、それを紙に書けば、おそらくあなたはそれを成し遂げることができるでしょう」と言っています。そして次に、こうも言います。
「この先、あなたが考えるべきことはただ一つ『どうやって』というだけです。あとは、あなたがどれだけそれを切望しているか、どれだけの期間で頑張り続ける覚悟があるかにかかっているのです。」
「絶えず自分に『どうやって実現する?』と問いかけるのです。」
少なくとも私は、法人を立ち上げ、障がい者グループホームを事業化し、どのようなグループホームにしたいのか、など、すべて目標を書き、それから実行することを大切にしてきた結果、今があると考えます。
日々、その繰り返しだと思います。
だからこそ、困難な問題にぶつかっても、しっかりと向き合う自分がいるのだと思っています。