アラン・M・ウェバーの『魂を売らずに成功する』という本があります。アラン・M・ウェバーはこの本の中で、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスについて述べています。非常に興味深いので、以下に紹介します。
アラン・M・ウェバーがストックホルムにあるカオスパイロッツのスウェーデン校に来ていた時のことです。その日の講義にはムハマド・ユヌスが来られていて、ユヌスは学生一人ひとりに質問を促していましたが、ある一人の学生がこんな質問をします。
「気がかりな問題、取り組む必要がある問題があまりにもたくさんあると思うんです。私は何から手をつけていいのか、わからないんです。私は何からはじめらればいいんしでしょう?」
ムハマド・ユヌスはその学生の質問にシンプルにこう答えたそうです。
「どんなことでもいい。きみのすぐ目の前にある問題からはじめればいいんだよ。どんなことでもいい。きみの手の届く範囲ではじめればいい。私もそうだった。はじまりは一人の女性だった。彼女は少しばかりのお金を必要としていた。そのお金があれば、高利貸しと縁を切ることができたんだ。」
ムハマド・ユヌスは学生に「グラミン銀行」をつくるきっかけとなった話を詳しく話したそうです。
「一人の女性との出会い、高利貸しに頼るしかない現状、多くの同じ境遇にある人々。彼女が借りている金額は先進国の感覚からすれば、ごくごくわずかなものだ。だが、彼女たちには支払える額ではないのだ。ユヌスは地元の銀行に出向き、現状改善を訴えたがそれは徒労に終わった。たまりかねたユヌスがポケットマネーを貸したことがグラミン銀行創設への第一歩となった。」(『魂を売らずに成功する』)
「小さなことからはじめよう。『放っておけない』問題に対して、何かできることをやってみよう。それを日常的な取り組みにして地道に続けよう。自分の本能と自分の目を信じて、専門家か同意しようがしまいが、あなたにできるやり方ではじめればいい。
小さなことからはじめよう。すぐに手の届く問題からはじめればいい。心が痛む問題からはじめればいい。ユヌスはこう語った。『さあ、あなたもはじめよう』」(前掲書)
現在、私たち縁パワーは、障がい者グループホーム「縁パワーハウジング・ウェイ」を運営しています。私たちが障がい者グループホームの運営から出発したのは、まさにムハマド・ユヌスの「放っておけない問題」に対して、何かできることをやってみようと思ったからにほかなりません。「自分の本能と自分の目を信じ」て、私たちが「できるやり方」ではじめたのです。
私は、アラン・M・ウェバーの『魂を売らずに成功する』を再読しながら、あらためて私たちの活動を再認識したと言えます。
「目の前にある問題からはじめればいい」