つくろい東京ファンド代表理事、そして住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人の稲葉剛さんは、公式サイトの中で「障害者差別解消法施行!障害者への入居差別はなくせるか?」という文章を掲載しています。非常に興味深い内容ですので、以下に整理したいと思います。
障害者差別解消法は、差別を解消するための措置として、民間事業者に対して「差別的な扱いの禁止(法的義務)」と「合理的配慮の提供(努力義務)」を課し、それぞれの分野の担当大臣に具体的な対応指針を事業者向けに示すことになっています。
稲葉さんによれば、住宅分野では、昨年12月、国土交通省が宅建建物取引業者を対象とした「対応指針」を公表し、指針では「差別的な扱い」として禁止する行為として、「物件一覧表に『障害者不可』と記載する」、「物件広告に『障害者お断り』として入居募集を行う」、「宅建業者が、障害者に対して、『当社は障害者向け物件は取り扱っていない』として話を聞かずに門前払いする」、「宅建業者が、賃貸物件への入居を希望する障害者に対して、障害者であることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る」、「宅建業者が、障害者に対して、『火災を起こす恐れがある』等の懸念を理由に、仲介を断る」、「宅建業者が、一人暮らしを希望する障害者に対して、一方的に一人暮らしは無理であると判断して、仲介を断る」、「宅建業者が、車いすで物件の内覧を希望する障害者に対して、車いすでの入室が可能かどうか等、賃貸人との調整を行わずに内覧を断る」、「宅建業者が、障害者に対し、障害を理由とした誓約書の提出を求める」、などの事例を挙げています。
障害者差別解消法が施行されたことによって、明確に「違法」だと認定できるようになったということですね。
その他、努力義務である「合理的配慮」として、対応指針では、「障害者が物件を探す際に、最寄り駅から物件までの道のりを一緒に歩いて確認したり、一軒ずつ中の様子を手を添えて丁寧に案内する」という行為が例示されていると言います。
稲葉さんは「法律の施行と国交省の対応指針によって、障害者は賃貸住宅に入居しやすくなるのではないでしょうか」と言っています。しかし、さらに稲葉さんは「明文化されない、明示されない形での入居差別はなかなかなくならないのではないか」とも述べています。
後者は、今後も注視する必要性を感じますね。
ちなみに、稲葉さんは、「大阪府と不動産に関する人権問題連絡会」が府内の全宅建業者を対象に実施した調査(2009年)を援用しています。その調査では、「22.7%の業者が『障害者については家主から入居を断るように言われた』と回答」しており、このことから、稲葉さんは「明白な法律違反だと見なされるような形での入居差別は減っていくでしょうが、はっきりと理由を言わないで入居を事実上、拒否するケースはむしろ増えるのではないか」と懸念しています。さらに、日本賃貸住宅管理協会が管理会社に対して実施したアンケート調査結果を引き合いに出しています。この調査結果では、「障害者のいる世帯の入居を『拒否している』と答えた賃貸人の割合が2.8%と、五年前の同調査から.1.2ポイント減少したのに対して、『拒否感がある』と答えた賃貸人の割合は74.2%と、前回よりも21.3ポイントも増加」しているとし、次のように言っています。
「『拒否している』と明言するのは不適切だという認識は広がっているものの、四人のうち三人が『なべくだったら入れたくない』と思っているのでは、部屋探しのハードルは高いままでしょう。」
稲葉さんの言われる「障害者への入居差別問題」は「障害者差別解消法」が施行したからといって安心できることではなく、これからもしっかりと「障害者への入居差別問題」を注視し、なくしていくための運動に取り組んでいきたいですね。
(理事長 山田 育男)