正会員・佐藤信行さん
高齢者グループホーム支援員
社会福祉士・介護福祉士
今年は明治維新から150年とのことで、それに絡めて官民あげて様々なイベントが予定されてます。私たちは、日頃の忙しさに翻弄されて、歴史を近視眼的に捉えがちですが、歴史を100年、200年単位の尺度で捉え、今の自分の立ち位置を確認することも大切です。なぜならば、現代や未来の課題の解は、過去の歴史の中にあるからです。
私は、学生時代の1989年に大きな出来事に遭遇しました。昭和天皇崩御、天安門事件、ベルリンの壁崩壊です。日本はバブルの最盛期で、12月に日経平均株価が最高値を記録しました。
時を遡ること1989年から200年前、1789年の欧州で大きな出来事が起きました。フランス革命です。啓蒙思想に立脚した、人権、自由、平等、民主主義の萌芽が生まれ、近代の扉が開かれました。その後、ナポレオン戦争、ウィーン体制、第一次大戦、第二次大戦、米ソ代理戦争、そしてベルリンの壁崩壊、続くソ連邦崩壊により東西冷戦が終結し、1991年以降は米国の一極支配が始まります。
フランス革命から200年後、極東の島国日本で人類史上希に見る地上の楽園が勃興し、同時に米国の一極支配が始まったのは偶然でしょうか?私は、その200年間を、前半を長い19世紀(1789年から1914年の第一次大戦勃発)と、後半の短い20世紀(第一次、第二次大戦、東西冷戦時代)に分けて考えます。そして特に、前半の長い19世紀での、欧州と米国との歴史過程の違いが、以降の歴史に大きく影響していると考えます。
近現代史を人の成育期に例えるならば、長い19世紀とは[少年期と青年期]です。啓蒙思想とは、[人の理性を信じ、教育と科学力で自由な理想社会の建設を目指す合理主義]です。しかし欧州はウィーン体制下で第一次大戦を起こし、理想社会建設のための科学力で、ダイナマイト、機関銃、戦車、航空機、戦艦、潜水艦、毒ガスを発明して戦場で使用し何百万人もの犠牲者を出しました。その結果、欧州の人々は、[人の理性や科学力だけでは、人は幸せになれない(理想社会の建設は不可能である)]ことを学びました。この反動が欧州浪漫主義となります。
一方、米国の長い19世紀は、独立戦争に勝ち英国から独立し(1776年)、その後は西部開拓と南北戦争(1861年から1865年)の北軍勝利。ネイティブを駆逐し北米大陸西海岸まで開拓を終えると、イケイケドンドン!!で、スペイン領、ハワイ、フィリピンを力業で強奪します。欧州で第一次大戦が勃発し、米国も遅れて参戦しますが、もちろん米国本土が戦場になることはありません。第一次大戦の勝敗を決したのは、戦地から遠く離れた米国の工業力と物量、それらを裏付けた科学力です。連勝連勝の米国は、[人の理性や科学力で、人は幸せになれる(理想社会の建設が可能である)]ことを学んだのです。この学習効果が、米国の科学信仰と自由主義と合理主義を益々精鋭化させてゆきます。
欧州と米国の長い19世紀の歴史体験が、キリスト教文化圏での、[欧州の理性と科学に対する懐疑的な浪漫主義]と[米国の理性と科学を信仰する合理主義]とに分派します。少年期、青年期の人格形成は、その後の人生に大きく影響します。
第二次大戦は、知っての通り米国の科学力と物量が連合軍を勝利に導き、以降米国の価値観は揺るぎないものとなりました。米国は、[科学信仰、自由主義、合理主義]を世界中に布教することが、神(キリスト教の神)から与えられた使命と確信し、世界を価値の一元化に乗り出します。これか新自由主義(ネオコンサバティブ)に代表されるグローバリズムです。しかし、非キリスト教文化圏でのイラク戦争、アフガニスタン戦争で手酷い痛手を被り、米国は国力が疲弊し2013年にアフガニスタンから撤退します。そして皮肉なことに、2014年以降ISがイラクとシリアから跳梁跋扈します。
私は今日の米国を、少年期と青年期に連戦連勝の喧嘩番長が、負けを認めずに壮年期を迎えた、[メタボな金満不良老人]と捉えてます。その象徴が、第45代大統領トランプです。と、考えればトランプ氏が大統領になったのは歴史の必然です。
来年2019年は、フランス革命から230年、ベルリンの壁崩壊から30年です。人権、自由、平等、民主主義の旗手、米国、英国、フランス(ド・ゴール亡命政権とレジスタンス)は第二次大戦でファシズムを打倒しましたが、冷戦終結以降の米国一極支配を経て、中東イスラム教文化圏は混乱の坩堝と化し、その怨念が特に米国とフランスに向けられてます。
自由の女神像は、米国建国時にフランスからの贈り物で両国絆の証です。しかし時を経て、[自由とは金儲けのためには、どんなことをしてもよい自由]となってしまいました。自由の女神像は、貧困と飢餓に苦しむ人々の目にはどの様に映るのでしょうか?私たちは、自由のためにファシズムとの闘いに命を散らせた義勇軍の兵士に顔向け出来ません。日本は、ユダヤ教文化圏でもなく、キリスト教文化圏でもなく、イスラム教文化圏でもありません。第二次大戦の敗戦国で、核兵器により自国民が殺戮され、努力して経済大国となり、途上国への支援を行い、皇室外交の出来る、主権在民国家です。故に、日本にしか出来ない役割が必ずあるはずです。
150年前に明治維新を成しました。きっかけは、米国が分裂する南北戦争直前に来航した、ペリー率いる米国黒船艦隊です。今、再び米国が分裂しています。ペリーの黒船は核を積んでませんでしたが、トランプの黒船は核を積んでます。隣の半島ではメタボな不良青年とメタボな金満不良老人が威嚇の応酬を繰返し、日本は150年前に負けず劣らずの周辺事態に置かれています。
来年、フランス革命から230年に、元号が変わります。[誰がために鐘は鳴る]のか?私たち一人一人が今、それを問われているのです。