正会員・佐藤信行さん
高齢者グループホーム支援員
社会福祉士・介護福祉士
私は、都内の介護サービス事業所に勤務してます。事業所は2階建てで、1階はデイサービス、2階は認知症高齢者のグループホームてす。月に何度か、デイサービスのプログラムにグループホーム入居者が合流して一緒にレクリエーションを楽しみます。
グループホーム入居者に人気のあるレクリエーションは、[アコーディオン伴奏による歌唱]です。このプログラムは、週1回アコーディオン演奏者のボランティアを招いて、デイサービス利用者やグループホーム入居者がリクエストした曲を演奏してもらい、皆で歌う約1時間のプログラムです。曲目は、事業所にある歌集の中から利用者や入居者がリクエストするのですが、曲目のリストは、予め演奏者に渡されているのではなく、当日リクエストされた曲目を、その場で演奏者に依頼し、即興で演奏してもらいます。演奏者は正に、人間ミュージックボックスです。
曲目の嗜好は、季節感がある歌、季節を問わず人気のある歌、個人的に好きな歌 等様々です。例えば、早春賦、ふるさと、青い山脈、月がとっても青いから、高原列車は行く、憧れのハワイ航路、一杯のコーヒーから、東京ラプソディー、高校三年生、長崎の鐘、リンゴの歌、赤とんぼ、ペチカ、見上げてごらん夜の星を といった歌です。
歌は、人に希望や力を与えてくれます。例えば、映画[サウンド オブ ミュージック]は、ドレミの歌やエーデルワイスから、逆境に置かれた人々が勇気を与えられる姿を描いてますね。
日頃、表情の乏しい認知症の方が、歌を口ずさむことにより表情が明るくなり、意気揚々と歌唱する姿には、感動を覚えます。利用者や入居者は、1964東京オリンピックの頃に青春時代を過ごした世代の方々です。つまり、高度経済成長の担い手で、今日の私たちが享受している豊かな生活を築いて下さった大先輩です。
先日、千葉に住む、右麻痺の父の介護に行って来ました。リビングの机の上に付箋紙が貼ってあり、読むと、[早春賦 春は名のみの 風の寒さや]と鉛筆で書いてありました。父に、歌詞の意味を問うと、[ハルトハ ナバカリ カゼガ ツメタイ]と応えました。そして、[チョウド イマノ キセツ]と言い、自分の部屋からガラス瓶を利用した筆立てを持ってきました。ガラス瓶には、[梅一輪]と書いてあり、私が、[梅一輪 一輪 ほどの あたたかさ]と応じると、父はニッコリ笑いました。