認知症高齢者グループホーム勤務
社会福祉士 佐藤 信行
先日、父の家に行くと、次のような事が書かれたメモを見せてくれました。
[こぶし 辛夷 山里の春を告げる 木筆 こぶし 辛い 東方の未開人]
[辛夷]とは、唄にある、[白樺 青空 南風 こぶし咲く あの丘 北国の 北国の春・・・]の、こぶしです。父は、この山里の春を告げる木の名前に、[辛い]と[東方の未開人]を意味する漢字が使われていることに疑問を感じたとのことでした。
夷の意味は何?と私が訪ねると、父は、[ヨソモノ]と応えました。私は、夷の付く言葉を思い浮かべてみました。蝦夷、攘夷、東夷、征夷大将軍、華夷秩序・・・確かに、中央から見ての辺境に住む民を意味するようです。父は、春を告げる白い可憐な花を咲かせる木の名前に、[コノカンジヲ ツカウイミガ ワカラナイ]と言いました。
また、植物の本を広げて見せてくれました。[桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿]の箇所に線が引いてありました。これは、桜と梅の剪定方法に違いがあることを教える言葉とのこと。桜は幹や枝を切るとその部分が腐りやすいが、梅は余計な枝を切らないと翌年花が咲かなくなる、その違いのことです。父は、[コノアタリノ ウメガ サキハジメタヨ]と、[カワズザクラハ マンカイダヨ]と2月28日付の新聞の切り抜きを見せてくれました。
[ハヤク ハルガ コイコイ ト ハルヲ マッテイル]と切り抜きを大事そうにしまいました。
房総半島の内房線五井駅から上総中野駅間と、上総中野駅から外房線大原駅を結ぶ路線があります。前者を小湊鐵道、後者をJR. 夷隅鉄道と言います。一両編成の電車が、房総半島の野山をコトコトと走る姿に風情があります。春は黄色い菜の花畑の中を走ります。私は、この路線が大好きです。郷里の誇りです。
千葉は、もう春です。