歴史から学ぶ５ 　～グローバリズムからローカライズへ～

 

 

歴史から学ぶ　５

グローバリズムからローカライズへ

 

認知症高齢者グループホーム勤務

社会福祉士　佐藤　信行

　国民国家の融解は、同時進行で周辺国との融合を産み、その周辺国を従える大国による帝国が誕生します。帝国の単位は一つの文明圏であり、地球上に六つ程度の帝国ができると予測します。それは、一帯一路を掲げる中華帝国、偉大なロシアを掲げるロシア帝国、オスマン帝国復活を掲げるトルコ帝国、アメリカ　ファーストを掲げる米帝国・・・。一つの言語、一つの通貨、一つの尺度、一つの価値観で地球を統べようとした米国一極支配グローバリズムは、2018年現在の世界情勢を見る限りにおいて、多くの人々がNOを突きつけてます。歴史とは、ふりこが振りきれた瞬間に逆方向へ戻る作用が働きます。グローバリズムが極限まで振りきれた瞬間、各帝国は他の帝国とは不干渉の姿勢を保持し、内側に閉じてゆき、約六分割された地球は六つのコスモロジーが並立共存する世界となります。

　その帝国の大きさをイメージするならば、19世紀末の頃です。清朝帝国、ロシア帝国、オスマントルコ帝国、広義のウィーン体制(神聖ローマ帝国)、南北戦争に勝利し北軍が制覇した北米大陸(米帝国)・・・といったものです。この位のサイズ(文明圏)が帝国としての座りが良いのです。つまり、世界は第一次大戦以前の形に戻ってゆくのです。ベル・エポックの時代は、100年続いた啓蒙思想的な欧州秩序体制下でありながら大量殺戮兵器を用いて、何百万人もの犠牲者を出す戦争を惹き起こしてしまいましたが、現代人はグローバリズムの失敗を見ているので、覇権拡大のための大国同士での大規模武力衝突は避けると考えます。故に、帝国は維持温存されます。しかし、全ての地域が帝国に収斂されるわけではなく、隙間、隙間に辺境がのこります。即ち、ニッチな辺境です。私は、日本と韓国と台湾の連携をこの様に捉えてます。連携とは合従(がっしょう)です。戦国時代に、小国は大国の脅威と対峙するために、小国同士で合従して安全保障の基本戦略とします。日本と韓国と台湾は、儒教文化圏、人権思想、民主主義の共通する価値を有し、比較的違和感なく往き来できる国です。

 

一方で、帝国の内側やニッチな辺境の内側は、帰属意識(コミューン)という単位で、より細分化(ローカライズ)されてゆきます。なぜならば、国民国家の融解と融合を経て、人々は居心地の良い共同体に帰属することを渇望するからです。私たちは、市民レベルでの共同体建設に如何に参画するかが、居心地の良い共同体に帰属するための鍵となります。

　居心地の良い共同体とは漠然とした概念ですが、次回　歴史から学ぶ　６[地域コミュニティーの喪失と再生]で、語ってみたいと思います。これは、2017年10月23日の会員寄稿欄に掲載されたものです。

続く