歴史から学ぶ7
~米朝首脳会談を考える~
認知症高齢者グループホーム勤務
社会福祉士 佐藤 信行
今年の5月に、米国と北朝鮮の首脳会談(米朝首脳会談)が予定されてます。昨年よりの米国と北朝鮮間の緊張から、冬期五輪を経て、急展開の首脳会談です。焦点は北朝鮮核開発保有の是非を巡る会談となることは間違いありません。
私は、米朝首脳会談のニュースを見る度に、第二次大戦直前の、[ズデーテン地方の割譲]を思い出します。当時、ヒトラーは、チェコ北部一帯(ズデーテン地方)にドイツ人居住者が多く住んでいることを理由に、併合を要求します。この問題を巡り1938年にミュンヘン会談が行われ、英仏はナチスドイツの侵略行為の拡大を回避するために宥和政策をとり、ズデーテン地方の割譲を容認します。しかし、英仏の弱腰政策がナチスドイツの侵略行為を増長させ、1939年にドイツ保護領としてチェコを解体してしまいます。そして、同年9月ポーランドに侵攻し第二次大戦が勃発しました。
現在、米国の識者の間では、[北朝鮮に核開発保有を断念させることは、極めて困難であり、なんらかの妥協点を模索し、宥和政策を講じるのが現実的ではないか]との外交方針案がでてます。具体的には、[米国に届く長距離射程の核ミサイル開発保有を放棄させる替わりに、短距離射程の核ミサイル開発保有を認める]ことです。自国第一主義のトランプ大統領なら、この外交カードを使うことは多分にあります。歴史的意味において、この宥和政策は日米安全保障条約は有名無実であるとの証となります。仮にそうなった場合、日本は北朝鮮の核ミサイル射程内に残され、日本にとっては最悪のシナリオです。
ミュンヘン会談の時に、英仏はナチスドイツの侵略行為に対して宥和政策を講じ、結果、侵略行為を増長させ第二次大戦を招きました。現代の北朝鮮に世界大戦を惹き起こす力はありませんが、短距離射程の核ミサイル保有は、[あの、やり方があるのかぁー]と北東アジアのみならず、悪しき前例として、世界中に多大な悪影響を及ぼします。また、北朝鮮の核技術は、中東(特にシーア派イラン)へ伝わる危惧が多分にあり、そうなれば、シーア派イランの敵対勢力も核ミサイルを確実に保有します。結果、欧州は核の射程内に晒されます。
以上の理由により、北朝鮮核開発保有は、絶対に応じることのできないレッドラインです。2018年の米朝首脳会談を注視しましょう。
続く