認知症高齢者グループホーム勤務
社会福祉士 佐藤 信行
オーストリアの教育学者シュタイナー(1861-1925)は子どもたちの前で語りました。「空を見てごらん、鳥が飛んでいるね。鳥が飛べるのは翼があるからだね。君たちの背中には翼は無いね。では君たちは空を飛べないのかな?そんなことは無い。君たちには翼がある。右の翼に注意力、左の翼に勤勉。この二つの翼をはためかせれば君たちは自由に空を飛ぶことができるんだよ」
シュタイナーの語る左右の翼とは、左脳と右脳のことと思われます。左脳は言語・思考力を、右脳は創造力を司ります。左脳と右脳をバランス良く育むことの重要性を説いたものと思われます。
シュタイナーは権利と義務、自由と責任を理解して自分のものと体得する重要性も説いています。
バブルが終わって四半世紀経ちます。現代の高校生は、そのほとんどの人生を経済が下降する中で育ちました。夢を語ることを放棄した大人たちに囲まれて、彼らの後ろ姿を見ながら幼少期、少年期を過ごしました。自尊感情が育たなかった背景には環境要因が大きく影響していると思います。
子どもたちの自尊感情を育むためには、大人が夢を語ることも大切です。夢を語る大人は格好よい。格好よい大人に受容され、褒められ、愛されれば自尊感情は育まれると思います。今、大人たちは子どもたちの視線が自分の後ろ姿に注がれていることを自覚すべきではないでしょうか?
シュタイナーが教育の実践をしていたのは、第一世界大戦後から第二次世界大戦前の欧州です。黒雲のたちこめた暗い時代であったと想像します。けど、シュタイナーは子どもたちの前で夢を語り続けました。