人智学とは?
認知症高齢者グループホーム勤務
社会福祉士 佐藤 信行
[大切なものは、目には見えないんだよ] サン テクジュペリ 星の王子様より
人智学とは、[人がより善く生きるために、実践を重視する]学問です。特徴的なことは、[見えない世界を大切にする]ことです。
見える世界と見えない世界について考えます。見える世界をこちら側の世界、見えない世界を向こう側の世界、と表現することもあります。これから考えることは、[見えない世界は在る]ことを前提に話を進めます。見える世界とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感で認識できる世界です。そして、五感で認識できない世界が見えない世界(向こう側の世界)です。乱暴に定義すれば、[神さま、仏さま、聖霊、悪魔、鬼、妖怪、妖精、幽霊、霊・・・]が居る世界です。
人智学は、見えない世界を大切にします。目的は精神の成長、霊性の成長です。言い換えれば、[人の努力により、精神の成長と霊的な成長を獲得する]ことです。但し、ここで誤解してはいけないのは、別の章でも触れますが神智学とは違い、神に近づいたり神の力を獲得するのではなく、あくまでも人が既に有しているけど発揮されてない(磨かれてない)感覚を磨き、見えない世界に在る法則を、より善く生きるために役立てる学問です。
具体的には、人は五感の他にも、いくつかの感覚を有すると考えます。例えば直感や感性です。シュタイナー教育は、この直感や感性を磨くための実践です。シュタイナーは、児童期から青年期にかけて、からだ、こころ、あたまをバランス良く鍛えることが大切と説きました。
大切なことは、見えない世界を意識すること。見えないけど大切なものが確実にあることです。科学もまた、見えない世界に光をあててきた学問です。昔は、洋の東西を問わず伝染病は、見えない世界に棲む悪魔や鬼の仕業と考えられてきました。ウィルスや感染性黴菌は人の目に見えません。つまり、視覚では認識できません。科学技術の発展により顕微鏡が発明され、悪魔や鬼の仕業とされていた伝染病はウィルスや感染性黴菌の仕業であると解明されたのです。これは、こちら側の世界から向こう側の世界へ光をあてて、見えなかったものが見えるようになった現象です。科学とは見えない世界に光をあてて、見えるようにする人の智恵です。
人智学もまた、見えない世界にある大切なものを認識する人の智恵です。既に人が有しているけど発揮されてない感覚を磨き、見えない世界を認識し、見えない世界に在る法則を、より善く生きるために役立てる人の智恵なのです。
続く