歌声のつどいに行く
~充実した社会参加を求めて~
Bさんはグループホームに入居されてから約2年が経過しました。入居当初は、はじめてのこともあって、いろんな意味で不安なことが多かったのですが、グループホーム及びご家族様だけでなく、作業所の施設長の方や主治医の先生等に支えられ、落ち着いて生活をすることができるようになりました。
生活が落ち着いて来られると、作業所でのお仕事にも集中することができるようになります。現在は、作業所で働く方々と挨拶や雑談など、楽しく過ごすこともできています。職場から帰宅され、夕食の際には必ず作業所で楽しかったエピソードを語ってくださいます。職場の人間関係も広がってこられると、人に対する関心も広がってきます。作業所では仕事以外にイベントも開催されていますが、当初は参加することに消極的でしたが、最近でははじめて「日帰り旅行」に参加され、少しずつ充実した生活を過ごすことができるようになっています。
そんな時です。Bさんは「グループホームや作業所での人間関係がよくなってきましたが、実は、悩みがあるのです」と私に相談されてきたので、「どのようなことに悩まれているのですか」とお聴きすると、「グループホームのイベントでみんなでカラオケをしたり、一人カラオケをしたりすることも楽しいし、今後もしていきたいのですが、仲の良い友だちをつくって、そうした友だちとカラオケをして、その後に食事をしていろんな話をしてグループホームに帰宅したいなあって思っているのです」とBさんは話されました。Bさんのそうした希望は自然であり、健全だと感じており、私は「できることならそうしたBさんの希望を叶えることができるよう、何かお手伝いできれば」と思っていました。
この間、Bさんと一緒に充実できる社会参加の場所を探していました。Bさんは「こういうのに行きたい」と市民総合センターなどで見つけたチラシを持ってこられ、私がチラシの連絡先に電話を入れることを繰り返しやってきました。Bさんが好きな「歌」を歌う場所はいくつか武蔵村山市の市報で探すことができたので、「Bさんに合う場所かどうかわかりませんが、私も一緒に同行しますので、とにかくいくつか見学に行ってみましょう」ということになりました。もちろん、すべて平日に行われる会ですので、作業所の施設長の方に了承を得ながら、先日行われた「歌声の集い」にBさんと一緒に参加してきたのです。
2018年5月28日(月)、武蔵村山市民総合センターの3F学習室にて「歌声のつどい」(大砂うたう会主催)が行われました。「歌声のつどい」は毎月第2・第4の月曜日の10時から11時30分まで行われており、童謡・唱歌・歌謡曲など、参加者がリクエストに合わせて、みんなで歌う会です。会に参加する前に元締めの方に電話でお話をしておいたので、最初から声掛けなども含め、配慮してくださいましたが、障害があるなしにかかわらず、分け隔てなく、多くの参加者と一緒に楽しめる時間になりました。
参加者は20~30人くらいで、割合は圧倒的に女性の高齢者の方々が多く、男性は私を含めて4名ほどでした。男性は少なかったのですが、雰囲気が非常に良かったので、参加しやすかったです。
手元に歌集があり、参加者が歌いたい歌を手を挙げてリクエストをして、ピアノやギターの伴奏で参加者全員が歌うという形式の会でした。結構、参加者の方々は声を出されて歌われていますので、わからない歌でも声を出してそれなりに歌っていれば、だんだんと音程やリズムがあっていきます。「Bさんはどうかなあ」と思ってお聴きすると、「カラオケでは歌わない曲を歌う機会になり、レパートリーも増えそうで、楽しいです」と感想を述べられました。実際、Bさんの様子を隣で見ていましたが、Bさんなりに声を出して歌われていましたし、「あらためて歌集を見ながら歌うと、こんな歌だったんだなあって、こんな良い歌だったんだなあって、感心しました」と笑顔で話されたのです。
驚いたことは、Bさんが手を挙げてリクエストされたことです。歌は「悲しい酒」です。リクエストを伝えると、参加者から歓声も上がり、反応も良かったです。Bさんはいつも遠慮がちな方ですが、参加された場所で積極的に手を挙げてリクエストをするんだなあとびっくりしました。
夕食時に「歌声のつどい」についてBさんから話をしていただいたのですが、「歌集には海援隊の『贈る言葉』などもあって、驚きました。こういう歌も歌っていいんですね。それに、午前中に声を出して歌うことができ、午後の仕事でも気分よく働くことができました。次回は6月11日ですが、また参加したいと思って」とBさんは楽しそうに話されました。
予想以上に楽しんでいらっしゃったので、非常に安心しました。今回のような社会参加の充実した場所を少しずつ増えていければ、生活も仕事も、そして趣味も充実し、楽しく地域で暮らすことができると思います。
今後もそうしたBさんをお支えし、少しでもお役に立てれば幸いです。
(山田 育男)