AIとの共存(マニュアル化できないスキル　4)

AIとの共存(マニュアル化できないスキル　4)
社会福祉士　佐藤　信行

　今年の夏、郷里の病院や介護施設に入所している両親の面会のためタクシーを利用する機会が度々ありました。乗車時間は２５分程要するので運転手さんと会話するのも楽しい時間でした。会話の内容は時事ネタが多く、特に皆さん将来に対する不安を口にされてました。「タクシー業務やバス業務は、ナビゲーションシステムと自動運転技術により、自動車は無人化され職を失う者が大勢でてくる。その時、自分たちはどうなめのだろう？」と。そして、「ＡＩ(人工頭脳)と機械の融合により、多くの人間が職を失うだろう。」と。タクシー運転手さんは、多くの客を乗車させます。車内では様々な会話がなされます。その内容が運転手さん中で蓄積され、言語化して語られるわけですから内容は濃く信憑性が高いものと推察されます。もちろん聞く側に洞察力が求められるのは必須です。

　少子化による止まることのない人口減少の中で、人々の生活を支える社会のインフラシステムを維持するために、ＡＩと機械の融合は避けて通れない道であることは理解できます。しかし、人は消費生活者であると同時に労働者です。経済性や効率性や精度の土俵では、人はAIと機械の融合に勝てません。結果、経済活動から人は排除さけます。近未来小説の中で度々語られる「機械に人の仕事が奪われる。」ことが現実化し、今後加速化してゆくです。

　私たち人が近未来を生き抜くためには、「ＡＩと機械の融合」にできないスキルを獲得する必要があります。そのスキルが「マニュアル化できないスキル」です。マニュアルとは「誰がやっても同じ結果になるもの。」そして「方法を解体して、意味付けして、再び組み立てること。」と捉えます。これは、科学的アプローチです。ＡＩと機械の融合もその延長上にあります。それ故に、ＡＩと機械の融は「直観」と「洞察」を獲得できません。

１９世紀の欧州の人々は、科学技術と合理主義精神が世の中を幸せに導くと信じていました。しかし、導いた先に第一次大戦を惹き起こし、欧州は戦禍に巻き込まれ多くの犠牲者を出しました。第一次大戦は欧州の人々にとって大きな衝撃でした。その時代を生きた英国の陶芸家バーナード・リーチもまた、傷心の心を作品に反映させたものと推察します。東洋の文化に触れた彼は、東洋の美意識、東洋の思想の中に人類救済の解を求め、作品に祈りを込めたのではないでしょうか？

　１００年前「科学技術と合理主義精神の融合」が第一次大戦を招きました。近未来に「ＡＩと機械の融合」は人類に何をもたらすのでしょうか？
　聖書によれば「神は自分の形に似せて、人を創られた。」とあります。「人は自分の形に似せて、ＡＩと機械の融合を創る。」この近未来を、神は祝福されるでしょうか？もし、祝福されるとすれば、その条件は、人の「内省」をおいて他ならないと、私は信じます。

ありがとうございました。