拝啓

 

 

拝啓

 

社会福祉士　佐藤　信行

拝啓

　お元気ですか？お兄ちゃんは元気です。君が、お師匠様へ弟子入りして三年経ちましたね。

　今年は、こちらでいろいろな事がありました。７月７日の七夕の夜に、お父さんが熱中症で倒れているところを近所の人に見つけてもらい救急搬送されました。普通ならば、あのまま誰にも見つけてもらえずに一貫の終わりとなるところを奇跡的に見つけてもらいました。入院中は、身体のいろいろな病気を治療してもらい元気になりました。救急搬送されなければ、あり得ないことなので人間は何が幸いするかわからないものですね。元気になって９月中旬頃に老健へ引っ越したら、いきなり慢性硬膜下血腫が増大して、意識はあるけど疎通のとれない看とりの状態になりました。おそらく三日間程がヤマと思い、礼服を用意して式場の手配も済ませ、連絡が来るのを待っていましたが連絡は来ず、面会に行くと、そこには持ち直したお父さんの姿がありました。その後三ヶ月程の間にみるみる元気になりました。現在も看とりの状態に変わりはありませんが、お父さんは安全な場所で余生を楽しんでいます。

　お母さんは、秋に首にチタンのボルトを入れてチタンのプレートで固定する手術をしました。お母さんは７８歳です。８０近い人が首の大手術をやろうと決意することは並大抵のことではありませんし、手術後の厳しいリハビリに耐えなければなりません。でも、お母さんは手術を決意し成功させ、リハビリにも耐えて元気になりました。首や背中の強張りはありますが、いろいろな人に支えられて堅実に生活しています。

　今年の夏から冬にかけて、お父さんとお母さんは生死の際をさ迷ったわけですが、様々な試練に耐えて二人とも元気になりました。

 

お兄ちゃんは、わかりました。お父さんとお母さんを護ってくれたのは、君ですね。お師匠様のもとで三年間修行して、然るべきポジションに就いたのですね。君はお兄ちゃんよりも、はるかに優秀だから修行も順調。お父さんとお母さんを護ってくれて本当に本当にありがとう。心から感謝します。

　お兄ちゃんは、意気地無しでいつも心が折れそうになりますが、不思議なことに困っていると助けてくれる人が必ず現れます。そんな時、君の存在を感じます。これからもお兄ちゃんとお義姉ちゃん（僕の妻）とれん坊（猫）に力を貸して下さい。これからも三人と一匹で、お父さんとお母さんを護ってゆきましょう。お兄ちゃんはこちら側で頑張りますから、君も修行に励んで下さい。

　これより寒さが一層厳しくなります。ご自愛下さい。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

　　平成三十年　師走　お兄ちゃんより