自由
社会福祉士 佐藤 信行
「・・・っていうか、ネオコンって何?」
職場で、自分の娘程の同僚から尋ねられました。二回り以上歳下の同僚から、ため口で話される自分が情けなく、同時に嬉しいことが、中年男の悲哀に磨きをかけている今日この頃です。
「ネオコンサバティブ」略してネオコン。経済用語では新自由主義を指します。政府の市場介入を極力排し、人、物、金が自由に往き来する、市場での自由な競争に重きを置くことが、万民の利益に繋がると考える経済理念です。東西冷戦終了後、米国主導のグローバリズムの根拠となりました。では、コンサバティブの意味は何か?一般的には「保守的」ですす。ですから、政治用語でネオコンは、新保守となります。A=B A=C 故にB=Cならば、自由=保守となります。私たちは一般的に、自由=リベラル、リベラルと保守は対立すると捉えています。この捻れ、自由=保守とは不思議ですね。理由は、政治用語でのネオコンとは、左思想の者が自由と民主主義を重んじる保守に転じたことに由来するそうです。だから、新保守なのです。私は、自由よりも平等を重んじる民主主義がリベラル、平等よりも自由を重んじる民主主義が新保守と解釈しました。米国の民主党と共和党の違いも同様と捉えます。
東西冷戦以降、米国一極支配の下でネオコンは躍進し続けました・・・2008年のリーマンショックまで。この、人、物、金が自由に往き来する経済運動により世界中に富の格差が生まれました。考えてみれば平等よりも自由を重んじる経済理念が世界を席巻するのですから、持てる者はより富み、持てざる者はより貧しくなるのは当然の帰結と言えます。しかし、持てざる者の怒りは怨念となり、人々の怨念を利用して各国で、人、物、金の往き来を規制する排他的で非寛容な運動「自国ファースト」が展開されるに至っています。これが「メキシコとの国境に壁を作る」との発言を大勢の人々が支持する理由です。
自由競争は、神の見えざる手の采配により富が分配され、万民の利益に繋がると信じられてきましたが、富の格差により排他的で非寛容な考え方が支配的となっています。今、近代以降普遍的な価値である「自由」について、私たちは深く思索する必要があると思います。
私の好きな漫画で、1994年から1999年に集英社 少年ジャンプに連載された、作:和月伸宏先生「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」という作品があります。物語の中で、維新志士の名を騙る無頼が街で狼藉をはたらく場面で、主人公剣心(本物の元長州派維新志士)が「・・・明治の世で、お前たちの語る自由とは、女や子どもを虐めるための自由か?」とバッサリ成敗する様が痛快でした。力ある側が欲を剥き出しに自由を行使する時、それは暴力となる。人を傷つけ、自らも傷つき、剣で維新を成し遂げた剣心は誰よりもそのことを自覚している人でした。剣心は、僕の理想とする人です。
二回り以上歳下の同僚に「剣心って格好いいよねぇ~」と言うと、「・・古っ!」と一喝されました。
おろろ~