わが根拠よ
なぜきみだけが
宙づりにされたまま眠りゆく
われの心臓部に手をあてて
個の実存へ向かえと
問いかけるのか
ここにしかないわが存在を
今問い生きよと
揺さぶるのか
見開くこともできぬわれの瞼を
力いっぱいこじ開けて
この世界を見よと
語りかけるのか
呻きにしか聴き取れぬ
むきだしのまま投げ出されたわれの声に
耳を傾けるきみは
いったい誰なのだろうか
自己の存在を軽んじて生きようものならば
わが根拠よ
きみは容赦なく
われに己の身体を擦りつけ
今問い生きよと
揺さぶり続けるのか
わが根拠よ
われはいつもきみにつき動かされ
気づかぬうちに
手触りのあるこの世界へと
押しやられてゆく
危機的な生き方のなかからしか
自己を見出していくことができぬことを
きみははじめからわかっているのだ
わが根拠よ
きみと向き合うことでしか
今ここに生きる自己を見出し得ない
そんなきみとの出会いが
われには必要なのだ
宙づりの状態でいる現実のわれを
己自身で引き受けて
それでもなお
生々しいきみとの関係性に
応答してゆくことは
われにとって
命がけの飛躍なのだ
きみは その時
やさしくこうつぶやくだろう
今は問いを生きよ
いつの日か
その道のりの果て
気づかぬうちに
あなたは
その答えを
生きているだろう