うつむいて沈黙する
苦しみぬいたきみのまなざしから
かすかに震える声が聴こえてくる
蜜柑をむしるように
心をこじ開けることもせず
きみは ただ
痩せこけた掌を
震えながら
私たちに
差し向けるだけ
きみの渇きは
いったい何に飢えているのだろうか
いったい私たちに何を
問いかけているのだろうか
無名の声に耳をそばだて
私たちは
本当のしじまの意味を
聴き取ろうとする
きみの渇きは
私たちに何かを語りかける
語ることさえできぬ
傷つけられたきみの声は
きみそのものとして
私たちに呼びかける
きみの呼びかけは
私たちを
無条件に
応答するよう要請する
きみは応ずるべき何ものかだからだ
きみの呼びかけは
聴き取られることで
はじめて
名付けられる
きみは威力のある言葉
世界を抉り出す唯一の存在
そんなきみをもう
私たちは
黙殺することはできない