無人駅のホームのベンチで
あなたは
何かを待っています
誰かを待っています
いつ来るかもわからない
時刻表すら存在しない
その駅で
あなたは ひとり
何かを待っています
誰かを待っています
いずれ停車するだろう電車から
下車する乗客は
あなたにとって
いったい何でしょうか
いったい誰でしょうか
無人駅のホームのベンチで
あなたは
遭遇することのなかった何かを
あるいは
出会うことのなかった誰かを
待っているのでしょうか
聴くことのできなかった呼びかけを
待っているのでしょうか
しかし
あなたは誰でも良いというわけではありません
一方的に下車する乗客の
一方的な出会いに
あなたの心は振り向きません
あなたの心は ただ
あなたの心と
誰かの心が
いずれ結び直される
時を待っています
いずれ出会い直される
関係を待っています
無人駅のホームのベンチで
あなたは
誰も下車することのない乗客を
待つことをいといません
あなたは
誰も下車しないことを
さみしがりません
恐れません
あなたは ただ
あなたの思いと通わせることのできる
新しい息吹を待っています
あなたは それまで
ベンチを動きません
あなたを意に介さず
素通りする人々を
待ってはいないのですから
心から歓迎させられる
何か あるいは
誰かを
待つまでは
あなたは きっと
無人駅のホームのベンチから
離れることはないでしょう
あなたは ただ
心から歓迎させられる自分を
用意しているだけなのです