研修「触法精神障害者における地域生活支援の可能性と課題~当事者と支援者の相互作用に焦点をあてて~」
2025年10月17日(金) 14時~17時
講師 東洋大学社会学部教授 井沢 泰樹(金泰泳)
参加者 縁パワー理事長 縁パワー副理事長
理事長の私が福岡教育大学大学院にいた頃に大変お世話になった井沢泰樹先生(金泰泳先生)が「触法精神障害者における地域生活支援の可能性と課題 ~当事者と支援者の相互作用に焦点をあてて~」という論文を書かれています。大変興味深く拝読させていただいたとともに、当法人の外部研修として学ぶべき点が多々あると考え、井沢先生にお話をしていただきました。以下は、外部研修の内容です。
本研修の内容は、NPO法人「やすらぎ」(仮名)という団体の触法障害者に関する実践を通して、触法精神障害者と地域生活支援の重要性や、その課題について講義をしていただいた後、質疑応答を通して、触法精神障害者支援のとらえ方、何を大切に支援をしていった方がよいのかを、4名の触法精神障害者の事例を読み解きながら、考えていく研修となりました。
まず、講師は「触法障害者」「犯罪障害者」「累犯障害者」の用語の使い方について説明され、講師は「3つの用語のうち、「触法障害者」という用語を人権の視点で採用していることを話されました。犯罪というものは障害者だから起こすのではなく、「犯罪はそもそも環境の中で作られている」とします。また、「触法障害者」という用語は、「出所後に社会の居場所がないことが、その結果として繰り返し服役生活をすることになるのではないか」と問題提起します。
また、参加者からは「触法精神障害者」という用語を使われている点に着目しつつ、事例は精神の方ではあるものの、最初に知的障害があり、家庭環境などの生育歴、学校のいじめ、社会環境の中で受け止めてもらえる場所がない中で、その後、二次障害、三次障害、四次障害などになり、「精神障害」を抱えているのではないかという意見が出ました。
たとえば、Aさんは放火などで逮捕されていましたが、小学生の頃は親の離婚、再婚、中学生の頃は虐待、児相、施設入所します。Aさんは親を信用していない実情があるのではないか。また、Bさんは殺人未遂等で逮捕されているが、中学生の頃にはいじめを受け、兄は統合失調症のため家で暴れる等の環境で生活していました。結果的に兄の首を絞めて傷害で捕まっています。車の運転事故だったり、サラ金などで多額の借金を抱えていたりしているところは、どうやら知的障害が最初にあって、しかし、家族がそれに気がつかないでいたことも、本人を生きづらくしていることがわかりました。
インタビューをした井沢先生は、実際に当事者の方に会ってお話をしてみたところ、「とても穏やかな人でした」という印象を持たれます。「やすらぎ」という団体で生活をしていく中で、施設長の方やスタッフの方に「受け止めてもらえたこと」がなにより本人たちが安定して生活できるようになっているということでした。
様々な事例を通して講師の井沢先生と研修の参加者で討論しました。
参加者からは「支援は個人的要因と環境的要因を統合的に支援することが重要」「利用者と支援者の相互作用、信頼関係の構築」という観点から討論がなされ、大切なこととして「絶対的な受容(愛情を注げ)」が大切であることが議論されました。自分を理解してもらえず、否定されてきた経験があればあるほど、そうした視点は重要なのではないかと整理されました。
また、触法障害者の支援をしていくうえで、支援団体は利用者一人ひとりの存在価値を認める集団にしていくことが大切なのではないかという意見が出ました。
また、今回の事例のリーダーとなった方が団体を以上の雰囲気につくってきたことが触法障害者が穏やかに生活できる要因をつくっていたものの、そのリーダーがあまりにも強かったがゆえに、スタッフが育たなかったというデメリットもあったのではないかという視点も出ました。講師によれば、そのリーダーが退職した後は、触法障害の方の居場所となる事業所にはならなくなったことを引き合いに出され、やはり、人を育てることも大切な視点であることが整理されました。
最後に、触法障害者を支援していくうえで「その人が自己肯定感を高めたり、出番があることをつくったりできる居場所が必要であることを確認して、研修を終えました。